スズキ初のグローバルEV(電気自動車)である新型「eビターラ」は、2025年度中に日本市場へ導入されることが決定しています。予想価格は430万円からで、国の補助金を活用すれば実質350万円台から購入可能となる見込みです。トヨタと共同開発した新世代EV専用プラットフォームを採用し、最大500km以上の航続距離(WLTCモード計画値)と、スズキ独自の4WD技術を進化させた「ALLGRIP-e」を搭載。デザイン、性能、実用性のすべてを高い次元で融合させた、注目のコンパクトSUVです。

この記事の結論まとめ
- スズキ初のグローバルEV、2025年度中に日本発売
- 予想価格は430万円〜、補助金で実質350万円台から
- トヨタと共同開発の新プラットフォーム「HEARTECT-e」採用
- 航続距離は最大500km以上を実現(WLTCモード計画値)
- 先進の4WD「ALLGRIP-e」とADAS Level 2を搭載
- 生産はインドのグジャラート工場が担当する
関連銘柄
- スズキ株式会社(7269)
- トヨタ自動車株式会社(7203)
- BYD(比亜迪股份有限公司)
スズキ電動化の狼煙!満を持して投入される初のグローバルEV

スズキは2025年7月10日、ブランド初となる量産バッテリーEV(BEV)、新型「eビターラ」の先行情報を公開しました。これまでハイブリッド車を中心に電動化を進めてきたスズキが、ついに本格的なグローバルEV市場へ参入します。車名は、世界的に知名度の高いSUV「ビターラ(日本ではエスクード)」の名を受け継ぎ、電動を意味する「e」を冠しています。

このeビターラは、単なる既存モデルのEV版ではありません。トヨタ自動車と共同開発したEV専用の新プラットフォーム「HEARTECT-e」を基盤とし、設計段階からEVとして最適化されています。欧州を皮切りに、インド、そして日本を含む世界各国で販売される戦略的グローバルモデルであり、スズキの電動化時代を象徴する一台となることは間違いありません。
開発者が語る「スズキらしいEV」へのこだわり
開発にあたり、チーフエンジニアの小野純生氏は「EVである前に、クルマとしての走る・曲がる・止まるの基本性能を徹底的に磨き上げた」と語っています。先行する他社EVを詳細にベンチマークし、特にプジョーの「e-2008」を深く研究したとされ、その上でEVユーザーが日常で感じる不便さを解消することに注力したといいます。スズキが軽自動車ではなく、このコンパクトSUVからEV市場に参入したのは、グローバルでの販売規模と、EVとしての性能・価格のバランスを両立させるための戦略的な判断と言えるでしょう。
2025年度中発売!気になる価格は補助金適用で350万円台からか
発売時期は2025年度中、予約は10月開始の可能性
スズキの公式発表では、新型eビターラの日本導入は「2025年度中(2026年3月まで)」とされています。2025年7月10日にティザーサイトが公開されたことを皮切りに、2025年10月頃には予約受注が開始される可能性が高いと見られています。また、2025年10月30日から開催予定の「ジャパンモビリティショー2025」では、スズキブースの主役として大々的に実車が展示されることが確実視されています。
グレード別・詳細価格を徹底予想!
公式価格は未発表ですが、搭載されるバッテリーやモーターのスペックから、価格帯を予測することが可能です。駆動用バッテリーやモーターの性能は、現行の日産リーフに近い水準であることから、以下のような価格設定が予想されます。
グレード | バッテリー容量 / 駆動方式 | 予想車両本体価格 | 補助金適用後 実質価格(予想) |
---|---|---|---|
エントリー | 49kWh / 2WD | 約430万円 | 約350万円 |
ミドル | 61kWh / 2WD | 約530万円 | 約450万円 |
ハイエンド | 61kWh / 4WD | 約570万円 | 約490万円 |
※補助金額は80万円と仮定した場合の計算です。
最も安価な49kWh・2WDモデルは、約430万円と予想されます。国から交付されるCEV補助金が約80万円だと仮定すると、実質的な負担額は350万円となり、国産コンパクトSUVのハイブリッドモデルとも十分に比較検討できる価格帯に入ってきます。
最上級の4WDモデルは約570万円と、スズキ車としては高額になりますが、後輪を独立したモーターで駆動する高度な制御を持つ本格的な電動4WDシステムであることを考慮すれば、納得の価格設定と言えるでしょう。
デザインコンセプトは「Hi-Tech & Adventure」
新型eビターラのデザインは、「EVの先進感とSUVの力強さを併せ持ち、冒険心を刺激する力強いたたずまい」を目指して開発されました。2023年に公開されたコンセプトモデル「eVX」のイメージを色濃く受け継ぎながら、より洗練された市販モデルとして完成されています。
エクステリア:力強さと空力性能の融合
ボディサイズは全長4,275mm × 全幅1,800mm × 全高1,640mm、ホイールベースは2,700mm。マツダのCX-3などに近いサイズ感で、日本の道路環境でも扱いやすい大きさです。一方で、2,700mmという長いホイールベースは、BEV専用プラットフォームならではの特徴であり、安定感のあるたたずまいと広い室内空間に貢献しています。
- フロントフェイス: スズキのエンブレムを高い位置に配し、シャープな3点マトリクスLEDヘッドライトを採用。グリルレスのデザインがEVらしい未来感を演出
- サイドビュー: 短いオーバーハングと、後方に向かって駆け上がるようなキャラクターラインが躍動感を表現。Cピラーに隠されたリアドアハンドルが、クーペのようなスタイリッシュさを与える
- リアデザイン: フロントと共通のテーマを持つ3点マトリクスLEDテールライトが、ワイド感を強調
- 足回り: 18インチの大径アロイホイールと、悪路走破性を感じさせる185mmの最低地上高がSUVらしさを際立たせる
ボディカラー

ボディカラーは、ルーフをブラックとした2トーンカラー4色と、モノトーン1色の計5色が用意されます。
- ランドブリーズ グリーンパールメタリック(新色)
- スプレンディッド シルバーパールメタリック
- オピュレント レッドパールメタリック
- アークティック ホワイトパール
- ブルーイッシュ ブラックパール(モノトーン)
インテリア:先進性と機能性を両立した上質な空間
インテリアは、モダンで機能的な空間を目指してデザインされています。
- 統合ディスプレイシステム: デジタルメーターとインフォテインメントスクリーンを一体化した大型ディスプレイを採用。視線移動が少なく、安全運転に貢献します。メーター表示は好みに合わせてカスタマイズ可能
- フローティングセンターコンソール: コンソールが浮いたように見えるデザインで、先進性と収納性を両立。ダイヤル式のシフトセレクターも特徴的
- 異形ステアリングホイール: 上下をフラットにしたスポーティなデザインで、操作性とメーターの視認性を高めている
- 物理スイッチの採用: エアコン操作など、使用頻度の高い機能には物理スイッチを残しており、直感的な操作性を確保
- 上質な内装色: ブラウンとブラックを基調としたコーディネートが、SUVらしい力強さと上質感を表現
パワートレインと航続距離:用途で選べる3つの選択肢

新型eビターラには、2種類のバッテリー容量と2つの駆動方式を組み合わせた、計3タイプのパワートレインが設定されます。バッテリーには、熱安定性に優れ安全性が高いとされるBYD製のリン酸鉄リチウムイオン(LFP)ブレードバッテリーが採用されています。
スペック | 49kWh / 2WD | 61kWh / 2WD | 61kWh / 4WD |
---|---|---|---|
最高出力 | 106kW (142bhp) | 128kW (172bhp) | 135kW (181bhp) |
最大トルク | 193Nm | 193Nm | 307Nm |
航続距離 (WLTC計画値) | 400km以上 | 500km以上 | 450km以上 |
0-100km/h加速 | 9.5秒 | – | 7.4秒 |
車両重量 | 1700kg | – | 1890kg |
航続距離と充電性能

最も航続距離が長いのは61kWhバッテリーを搭載した2WDモデルで、WLTCモードの計画値で500km以上を達成します。これにより、日常使いはもちろん、週末のロングドライブにも安心して対応できます。
充電性能については、最大90kWの急速充電に対応しており、バッテリー残量10%から80%までを約45分で充電可能です。普通充電(200V/3kW)の場合、49kWhモデルで約15時間、61kWhモデルで約22時間で満充電となります。
また、寒冷地での性能低下を抑制するため、ヒートポンプシステムやバッテリーウォーマーを標準装備。外気温0℃における航続距離の悪化を、エコモード使用時には約10%に抑えるなど、実用性を高める工夫が凝らされています。
走りへの挑戦:新開発プラットフォームと電動4WD「ALLGRIP-e」
eビターラの走りを支えるのは、トヨタと共同開発したEV専用プラットフォーム「HEARTECT-e」と、スズキが長年培ってきた四輪制御技術の集大成である電動4WDシステム「ALLGRIP-e」です。
新プラットフォーム「HEARTECT-e」
このプラットフォームは、フロア下にバッテリーを敷き詰めることで低重心化と高いボディ剛性を実現。高張力鋼板の使用率を従来比で約2倍に高めながら軽量化も達成し、優れた衝突安全性と操縦安定性、そして広い室内空間を確保しています。プロトタイプの試乗レビューでは、その素直なハンドリング性能と乗り心地の良さが高く評価されています。
電動4WDシステム「ALLGRIP-e」
4WDモデルには、後輪を独立したモーターで駆動する「ALLGRIP-e」システムが搭載されます。これは、路面状況や走行状態に応じて前後輪の駆動力を最適に配分するもので、滑りやすい路面での安定性はもちろん、コーナリング時のライントレース性も向上させます。
さらに、悪路走破性を高める「TRAILモード」も設定。空転した車輪にブレーキをかけ、もう一方の車輪に駆動力を集中させることで、ぬかるみや雪道からの脱出をサポートします。この本格的なオフロード性能は、ライバルとなる多くのコンパクトEV SUVが2WDのみの設定である中、eビターラの大きなアドバンテージとなります。
多彩なドライブモード
走行状況に合わせて選べるドライブモードも搭載。「NORMAL」「SPORT」「ECO」の3つに加え、4WDモデルには雪道などに適した「SNOW」モードも用意されています。また、アクセルペダルの操作だけで加減速をコントロールできるワンペダルモード(イージードライブペダル)も備え、市街地での運転の疲労を軽減します。
安全性能:先進のADAS Level 2を搭載
eビターラは、最新の先進運転支援システム(ADAS)Level 2を搭載し、高い安全性能を確保しています。
- アダプティブクルーズコントロール: 前走車との車間距離を保ちながら追従走行
- レーンディパーチャーワーニング(車線逸脱警報): 車線を逸脱しそうになると警告
- ハイビームアシスト: 対向車や先行車を検知し、ハイビームとロービームを自動で切り替え
- アダプティブエマージェンシーブレーキ: 衝突の危険を検知すると自動でブレーキを作動
これらの機能に加え、6つのエアバッグと運転席ニーエアバッグ、横滑りを防止するESP(横滑り防止装置)、車両の接近を歩行者に知らせる車両接近通報装置(AVAS)など、充実した安全装備が備わっています。
競合ひしめく市場での勝算は?ライバル徹底比較
eビターラが参入するコンパクトEV SUV市場は、国内外のメーカーが続々とニューモデルを投入する激戦区です。
車種名 | スズキ eビターラ (4WD) | プジョー e-2008 | Kia EV3 (Long Range) | ボルボ EX30 (Twin Motor) |
---|---|---|---|---|
駆動方式 | 4WD | FWD | FWD | AWD |
バッテリー容量 | 61kWh | 54kWh | 81.4kWh | 69kWh |
航続距離 | 450km以上 | 406km | 約600km | 450km |
最高出力 | 135kW | 115kW | 150kW | 315kW |
全長 | 4,275mm | 4,305mm | 4,300mm | 4,233mm |
特徴 | 本格4WD、トヨタ共同開発 | 洗練されたデザイン | 圧倒的な航続距離 | プレミアム感、高出力 |
※数値は各モデルの代表的なグレード。航続距離はWLTCモードまたはそれに準ずる参考値。
eビターラの最大の強みは、このクラスでは希少な本格的な電動4WDシステム「ALLGRIP-e」を比較的安価に提供する点にあります。また、トヨタとの共同開発によるプラットフォームは、品質と信頼性において大きな安心材料となります。航続距離ではKia EV3に及ばないものの、実用上十分な500km以上(2WDモデル)を確保し、価格と性能のバランスに優れた「スズキらしい」現実的な選択肢として、市場で独自のポジションを築くことが期待されます。
生産体制と今後の展望:インドからの逆輸入とトヨタとの協業
eビターラの生産は、インドにあるスズキの子会社「スズキ・モーター・グジャラート」が担当します。同工場では、日本でも人気のクーペSUV「フロンクス」も生産しており、その品質は市場で高い評価を得ています。インドで生産し、世界各国に輸出するというグローバルな生産体制は、コスト競争力を高める上でも重要な戦略です。
ただし、一部ではEVモーターに不可欠なレアアース磁石の供給不足が懸念されており、生産計画に影響を与える可能性も報じられています。スズキはこの課題を克服し、安定した供給体制を築けるかが今後の鍵となります。
また、このeビターラは、トヨタブランドからも兄弟車(車名は「アーバンクルーザー」と噂される)として発売される予定です。これは両社の協業関係が新たなステージに入ったことを示すものであり、今後、両社からさらに多様なEVが登場することが期待されます。
よくある質問
- 新型eビターラの正確な発売日はいつですか?
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スズキの公式発表は「2025年度中(2026年3月まで)」です。詳細な日程は未定ですが、2025年10月頃から予約が開始され、ジャパンモビリティショー2025でのお披露目を経て、正式発売となる可能性が高いと見られています。
- 新型eビターラは補助金を活用すると、実質いくらで購入できますか?
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予想価格に基づくと、最も安価な49kWh・2WDモデル(予想価格430万円)の場合、国のCEV補助金(仮に80万円と想定)を適用すると、実質負担額は約350万円からとなる見込みです。補助金額は年度やグレードによって変動するため、正式発表後に確認が必要です。
- トヨタから発売される兄弟車と新型eビターラの違いは何ですか?
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現時点(2025年7月)で、トヨタ版の兄弟車に関する詳細な情報は発表されていません。一般的に、兄弟車の場合はフロントグリルやエンブレム、灯火類のデザイン、ボディカラー、装備の組み合わせなどで差別化が図られます。プラットフォームや主要なパワートレインは共通となる見込みです。
- 新型eビターラはインド生産ですが、品質は大丈夫ですか?
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生産を担当するスズキ・モーター・グジャラート工場は、日本でも販売されている「フロンクス」を生産しており、その品質は市場で高く評価されています。eビターラも同様に、グローバル基準の高い品質で生産されることが期待されます。
- 新型eビターラの充電時間はどのくらいかかりますか?
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61kWhバッテリーモデルの場合、90kWの急速充電器を使用すると、残量10%から80%まで約45分です。自宅などで使用する200V/3kWの普通充電では、満充電まで約22時間かかります。
- なぜスズキは軽EVではなく、このサイズのSUVからEVを投入したのですか?
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eビターラは日本国内だけでなく、欧州やインドなど世界各国で販売するグローバル戦略車です。世界的に需要が高いコンパクトSUVセグメントに、性能・価格・航続距離のバランスが取れたモデルを投入することで、グローバルでの販売台数を確保し、電動化への投資を効率的に回収する狙いがあるとみられます。開発責任者も、他社のEVを徹底的に研究し、ユーザーの不満点を解消することに注力したと語っており、完成度の高いグローバルモデルを最初に投入する戦略を選んだと考えられます。